命を守る「5つの行動」

“もしかして”から始まる交通安全
交通事故の多くは「防げた事故」
交通事故は、一瞬の不注意や「大丈夫だろう」という油断から発生します。
どんなに技術があるドライバーでも、わずかな判断ミスや確認不足が命取りになることがあります。
こうした事故を未然に防ぐために、埼玉県などが推進しているのが、「交通事故防止のための5つの行動」です。
それが、
『もしかして』『とまる』『みる』『まつ』『たしかめる』
という、誰でもすぐに実践できるシンプルで力強い行動指針です。
一見、当たり前のことのように感じますが、この5つを確実に実践できるかどうかが、「事故を防げる人」と「事故を起こしてしまう人」を分ける境界線になるのです。
1. 「もしかして」
危険を予測する心構え
運転中に最も大切なのは、「まさか」ではなく「もしかして」と考えること。
「もしかしたら、あの角から歩行者が出てくるかもしれない」
「もしかして、前の車が急停車するかもしれない」
「もしかすると、信号が変わるタイミングかもしれない」
この“もしかして”の意識があるかどうかで、運転の質は大きく変わります。
多くの事故は、予測を怠った結果として発生します。
逆に言えば、「かもしれない運転」を習慣にできれば、危険を事前に回避できる可能性が高まります。
ベテランドライバーほど、経験から危険を先読みする力が身についています。
しかし、初心者でも「次に何が起こるか」を想像する練習を重ねることで、同じようにリスクを察知できるようになります。
2. 「とまる」
一時停止の本当の意味
「とまる」は単に車を止めるだけではありません。
それは、「安全を確保するための心のブレーキ」です。
一時停止の標識がある場所や交差点での停止はもちろんですが、「危ないかも」と感じた瞬間にも迷わず止まる勇気が必要です。
実際、事故の多くは「止まるべきところで止まらなかった」ことが原因です。
特に、見通しの悪い交差点や住宅街、夜間の横断歩道では、一瞬の停止が命を守る行動になります。
“とりあえず止まる”ではなく、“しっかり止まる”。
その一呼吸の差が、大きな事故を防ぐ分かれ道になります。
3. 「みる」
安全確認は“動作”ではなく“習慣”
停止したあとに欠かせないのが、「みる(確認)」という行動です。
左右・後方・前方を目で見て、耳でも周囲の状況を把握します。
ただ「見る」のではなく、「何を見るか」を意識することが重要です。
例えば、
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歩行者が渡ろうとしていないか
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自転車がスピードを上げて近づいていないか
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対向車がウインカーを出していないか
-
バックミラーに車が映っていないか
これらを瞬時に見極めることで、的確な判断が可能になります。
「見たつもり」ではなく、「見えた」と言えるまで確認する。
それが、“本当の安全確認”です。
4. 「まつ」
焦りを抑え、余裕を持つ勇気
「みる」まで終えたとしても、危険が完全に去ったとは限りません。
そのために必要なのが「まつ」という行動です。
安全確認をしたうえで、“今は動かない方がいい”と判断できること。
これは運転技術以上に、「心の余裕」を持てるかどうかにかかっています。
特に、右折時や踏切、渋滞時の車線変更などは、焦りや他車への遠慮が事故を誘発します。
「行ける」ではなく「安全に行ける」と判断できるまで待つ。
その冷静さが、命を守る最大の防御です。
急ぐ気持ちは誰にでもあります。
しかし、“一秒の焦り”が“生涯の後悔”に変わることもあるのです。
5. 「たしかめる」
行動前の“もう一度”が命を守る
安全確認をしたあとでも、実際に行動に移す前に「もう一度たしかめる」。
これが、事故を未然に防ぐ最後のステップです。
右折前、発進前、車線変更前、ドアを開ける前。
すべての行動の直前に、もう一度「たしかめる」ことで、見落としを防げます。
特に最近は、スマートフォン操作やナビ設定による「ながら運転」が問題視されています。
だからこそ、「操作する前にたしかめる」「動く前にたしかめる」という意識が、現代の交通社会ではより重要になっています。
「5つの行動」を習慣にするために
この5つの行動は、一度覚えたら終わりではありません。
日常の運転の中で繰り返し実践し、「意識せずとも自然にできる状態」にすることが理想です。
信号待ちの間に周囲の車を観察して「もしかして」と考える。
駐車場でバックする前に「たしかめる」。
これらの積み重ねが、安全運転への確かな習慣になります。
また、家族や仲間と「今日はこんな危ない場面があった」と話し合うことも効果的です。
共有することで、危険予測の引き出しが増え、より多くの状況に対応できるようになります。
まとめ
あなたの「一瞬の意識」が未来を守る
「もしかして、とまる、みる、まつ、たしかめる」
この5つの行動は、どれも特別な技術を必要としません。
誰でも、今すぐに実践できる安全運転の基本です。
しかし、当たり前のことを“確実に行う”ことこそ、最も難しく、そして最も尊い行動です。
一つひとつの確認、一度の停止、一秒の待機が、尊い命を守ります。
車を運転するということは、常に責任と隣り合わせです。
「自分は大丈夫」ではなく、「誰かを守るために」運転する。
その気持ちを忘れなければ、交通事故は必ず減らすことができます。

