それでも一発試験に挑戦する人たち 〜数字を超えた理由〜
運転免許の一発試験。
全国平均の合格率はわずか数%、一度でも受けた人なら「難しすぎる!」と口をそろえる試験。
それでも、毎年数千人がこの門を叩きます。
しかも彼らは、教習所に通わず、試験場でいきなり技能と学科の試験を受けるという、いわば“免許取得の最短ルート”を選ぶ人たちです。
なぜ彼らは、あえて険しい道を選ぶのでしょうか?
お金のために
一発試験を選ぶ最大の理由の一つは、やはり「費用」です。
教習所に通えば、普通免許の場合30〜40万円ほどが相場。
合宿免許でも20万円前後は必要です。
それに対して一発試験は、受験料や講習料、証明写真代などを合わせても1〜2万円台で収まることもあります。
もちろん、不合格が続けば受験料は積み重なっていきますが、それでも数回で受かれば教習所よりはるかに安く済みます。
特に学生やフリーター、出費を抑えたい社会人にとって、この差は大きな魅力です。
「少しでも安く取りたい」という思いが、合格率の低さを承知で挑戦する原動力になるのです。
時間のために
もう一つの大きな理由は「時間」です。
教習所に通うと、学科と技能を合わせて数十時間の授業が必要で、通学に1〜3か月かかることも珍しくありません。
それに対して一発試験は、試験日を予約できれば最短数日で免許取得が可能です。
たとえば、転職や引っ越し、海外生活からの帰国など、急に免許が必要になったケース。
長期の教習所通いが物理的に無理な人にとって、一発試験は時間を節約するための唯一の選択肢になることがあります。
自信のある人
一発試験には、運転経験のある人が挑戦するケースも少なくありません。
たとえば海外で免許を持っていた人、日本での免許が失効してしまった人、または仕事や趣味で長年運転してきた人などです。
こうした人たちは「基礎はできている」という自信から、一発試験での直接取得を選びます。
ただし、日本の試験は「安全運転の型」を重視するため、経験があっても試験用の運転に慣れないと落ちることも多々あります。
経験者であっても何度も受け直すのは珍しくありません。
挑戦心とプライド
理由の中には、もっと感情的なものもあります。
「教習所に頼らず、試験だけで免許を取ってやる」という挑戦心や、「自分は運転が上手い」というプライドです。
特にネット上の体験談や動画を見て、「難しいらしいけど自分ならできる」と火がつく人もいます。
また、一発試験合格はある種の勲章のような存在でもあります。
合格すれば、周囲から「すごい!」と言われ、ちょっとした自慢話にもなります。
これは数字には表れないモチベーションです。
不可避な事情
なかには、選択肢が一発試験しかない人もいます。
たとえば、免許を取り消された人が再取得する場合や、過去に違反や事故歴があり教習所での再取得が難しい場合です。
こうした場合、試験場での受験が義務づけられており、必然的に“一発勝負”の世界に挑むことになります。
厳しさを承知で挑む人たちの共通点
合格率の低さを理解した上で挑む人たちには、共通する特徴があります。
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情報収集が徹底している
ネットの体験談や動画をくまなく見て、試験官の傾向や減点ポイントを調べ上げる。 -
練習環境を自分で作る
ペーパードライバー講習や一発試験対策のスクールを活用し、実地練習を重ねる。 -
諦めない精神力
一度や二度の失敗では折れず、予約を取り続けて挑戦し続ける。
成功する人のパターン
実際に合格した人の話を聞くと、いくつかの共通パターンがあります。
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過去に運転経験がある(海外免許、免許失効後の再取得など)
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民間講習を受けている
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試験コースの事前下見をしている
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減点されやすい動作を暗記している
これらの準備を怠らない人ほど、合格までの回数は少なく済む傾向があります。
「それでも挑戦する理由」は一つじゃない
一発試験は、数字だけ見れば極めて効率の悪い方法に見えます。
合格率は一桁台、予約も混雑し、受験まで時間がかかることもあります。
それでも挑む人が絶えないのは、費用や時間の節約だけでなく、自己挑戦、経験の活用、あるいはやむを得ない事情など、多様な理由があるからです。
この挑戦は、単なる免許取得の手段ではなく、それぞれの人生背景や価値観が色濃く反映された選択でもあります。
だからこそ、成功したときの喜びもひとしおなのです。



