合格率わずか5%!一発試験突破の舞台裏
「これでダメなら、教習所に通うしかないと思ってました」
控室でそう微笑む山口美咲さん(27歳・仮名)は、つい数分前まで試験官の横でハンドルを握っていた。
うっすらと額に光る汗、握った手はまだ少し冷たい。
全国平均でわずか5%前後という普通免許“一発試験”に、4度目の挑戦でついに合格した瞬間だった。
教習所に行かなかった理由
美咲さんは東京で事務職として働いていたが、転職先が地方の営業職に決まった。
公共交通は1時間に1本のバスが走る程度で、車は必須。
「引っ越しや生活費で貯金はほとんどなくて、教習所の30万円は出せませんでした。
ネットで“一発試験”の存在を知って、これしかないって思ったんです。」
初挑戦の衝撃
試験場に立つと、思った以上の緊張感が押し寄せた。
コース図を頭に叩き込み、発進。けれど開始数十秒で試験官の声が響く。
「もう少し左に寄せてください」
さらに一時停止の減速不足、右折時の安全確認不足と次々に指摘。
試験官は終始無表情で、減点の内容は最後まで知らされない。
「ゴールした瞬間、“あ、これは落ちたな”って自分で分かりました。」
対策スクールとの出会い
2回目もあっさり不合格。
ネットで探し出したのは“一発試験対策スクール”だった。
講師は最初にこう言った。
「試験は安全運転かどうかじゃなく、“合格する運転”ができるかを見ます。」
右折3秒前のウインカー、首をしっかり動かす安全確認、カーブ前の減速姿勢──。
日常運転とは違う“試験仕様”の運転を、体に染み込むまで繰り返した。
メンタルの壁
3回目の挑戦。
序盤は順調だったが、最後の縦列駐車でポールの位置を見誤り枠からはみ出す。
「やり直してください」
その一言で頭が真っ白になり、呼吸も浅くなった。
結果は不合格。
「あと少しだっただけに、悔しさは倍でした。」
合格の日
4回目は違った。
朝の控室でコース図を眺めながらも、心は落ち着いていた。
「発進します」
自分の声の安定感に気づき、そのまま集中ゾーンに入った。
右折の合図、安全確認、停止線前の減速──すべてがスムーズだった。
最後の課題を終え、試験官が口を開く。
「お疲れさまでした。合格です」
その瞬間、胸の奥から熱いものがこみ上げた。
合格までの代償と収穫
受験料、交通費、講習代を合わせて約8万円。
金額的には安く済んだが、それ以上に大きかったのは「やり切った」という達成感。
「4回落ちてもあきらめなかった経験は、この先の自信になります。」
挑戦者へのアドバイス
美咲さんがこれから一発試験を受ける人に伝えたいことは、次の4つだ。
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事前練習は必須:試験特有のポイントを知ること
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安全確認は大げさに:見せる動きが評価される
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途中で減点されても最後まで諦めない
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感覚を保つため、間隔を空けずに受験
合格率5%という数字の裏には、美咲さんのように時間もお金も限られた中で、自分を追い込みながら挑み続ける人たちがいる。
今日もまた、免許センターの門をくぐる誰かが、その高い壁を越えようとしている。



