29歳女性、営業職に必要な免許を“一発試験”で掴むまでの3か月
仕事のために避けられなかった決断
29歳、会社員として働く美咲さん(仮名)は、ある日突然営業職への異動を命じられた。
人と話すのは好きだし、新しい挑戦自体には前向きだったが、ひとつ大きな問題があった。
営業先へ行くには車が必須であり、免許を持っていなかったのだ。
「どうしよう……」と最初は頭を抱えたが、逃げるわけにはいかない。
営業職で成果を出すためには、まず免許を取ることが絶対条件となった。
教習所か、一発試験か
免許取得といえば教習所。
しかし、彼女はすぐに「難しいかもしれない」と感じた。
理由はシンプル。
営業職に異動してからは平日の帰宅が遅く、土日は休みとはいえ仕事の疲れで予定を詰め込むのが難しい。
教習所のカリキュラムに沿って通い続ける時間が、どうしても作れなかったのだ。
そこで浮かんだのが「一発試験」という選択肢だった。
一発試験なら、拘束されるのは試験を受ける日だけ。
必要に応じて教習所の「スポット練習」だけ受ければ、自分の都合に合わせて進められる。
費用も大幅に抑えられる可能性がある。
「もしかしたら、私にはこれが合っているかもしれない」。
そう思うと、一気に挑戦してみる気持ちが高まった。
学科は独学で、通勤時間を有効活用
運転経験ゼロの彼女にとって、まずは学科試験が第一関門だった。
だが、美咲さんは「勉強するなら毎日の通勤電車で」と決め、書店で購入したテキストを片手にコツコツ暗記を続けた。
「覚えることは多いけれど、やればやるほど理解が深まるのが楽しかったですね。机に向かってガッツリ勉強するより、すきま時間を活用する方が私には合っていました」
その努力が実を結び、仮免許学科試験は1回で合格。
本免許の学科も同じく1回で突破できた。
自分の学習スタイルを信じ、効率よく取り組めたことが功を奏した瞬間だった。
技能試験で壁にぶつかる
一方で苦労したのは技能試験だった。
運転経験がない状態からの挑戦は、やはり甘くなかった。
仮免許技能試験では、1回目は緊張で発進の操作ミス。
2回目は安全確認の不足で不合格。
だが、3回目でようやく合格を勝ち取ることができた。
「最初は本当に自分にできるのかな、って不安になりました。試験官に注意されると心が折れそうになるんです。でも、スポット練習で指摘されたポイントを直すうちに、少しずつ“合格のコツ”が見えてきたんです」
その言葉どおり、本免許の技能試験では一度不合格となったものの、3回目でついに突破。
試験官に「丁寧な運転でしたね」と声をかけられた瞬間、努力が報われたと感じた。
平日受験と有給調整の大変さ
試験は基本的に平日に行われるため、会社との両立も大きな壁だった。
営業職は忙しく、有給を取りにくい雰囲気もあったが、上司に相談し、試験日を事前に共有することで理解を得るように努めた。
「正直、気まずい思いをすることもありました。でも、必要な資格を取るんだという覚悟を見せれば、周りも応援してくれるようになりました」
その姿勢が職場での信頼にもつながり、結果的に前向きな雰囲気で挑戦を続けられたという。
合格の瞬間、そして得た自信
挑戦を始めてから約3か月。
学科試験はスムーズだったものの、技能試験に何度も挑む日々は精神的にもきつかった。
だが、それを乗り越え、最終的に本免許を取得した瞬間の喜びは、言葉では表せないほどだった。
「試験場を出て、免許証を手にしたときの気持ちは今でも忘れられません。達成感と、自分ならやれるんだという自信をもらえました」
免許を取ったことで仕事の幅が広がったのはもちろん、プライベートでも車を使えるようになり、人生の選択肢が大きく広がった。
これから挑戦する人へエール
美咲さんは、自身の経験を振り返って「一発試験は簡単ではない」と語る。
だが同時に「挑戦する価値は十分にある」とも強調する。
「大切なのは、諦めないことです。最初は落ちても、少しずつ合格に近づいていると思えば続けられます。教習所に比べて自由度が高いので、自分の生活に合わせて挑戦できるのも魅力です。これから挑戦する人には、“焦らず、自分のペースで頑張って”と伝えたいです」