家族の強い反対から始まった挑戦
「危ないから、まだ早い」
20歳の大学生・真理子さん(仮名)が免許を取りたいと切り出したとき、家族は揃って首を横に振った。
車は便利な一方で事故のリスクもあり、若いうちに無理して取らなくてもいいのではないか、というのが家族の考えだった。
しかし話し合いを続ける中で、家族から意外な条件が提示された。
「もし“一発試験”で合格できるなら認めてもいい」
一発試験は合格率が低く、初心者にとっては特に厳しい。
だが、そこで合格できるなら確かな実力を身につけた証拠。
そうであれば運転を任せても安心だろう、と家族は考えたのだ。
真理子さんにとって、それは唯一の免許取得のチャンスとなった。
一発試験という険しい道
もちろん彼女も、一発試験が簡単な道ではないことは知っていた。
「難関受験だよ」「初心者には無理じゃない?」
周囲からもそんな声を耳にして、不安は募った。
それでも「我が家ではこれしか選択肢がないなら挑戦するしかない」と心を決めた。
公認教習所に通う代わりに、彼女が選んだのは非公認の教習所でのスポット練習だった。
自分の都合に合わせて必要な分だけ練習できるスタイルは、大学生活との両立もしやすかった。
費用も大幅に抑えられる。
だが同時に、練習の量も質もすべて自己責任。
自由である分、厳しさも伴う挑戦が始まった。
学科は得意分野、技能は苦戦の連続
勉強好きの彼女にとって、学科はそれほど大きな壁ではなかった。
大学の講義の合間や図書館の空き時間を使ってコツコツ勉強を重ねた結果、仮免許学科試験も本免許学科試験も、どちらも1回で合格を果たすことができた。
しかし、技能試験はまったく違った。
仮免許技能試験はなんと6回目でようやく合格。
最初はハンドル操作に不慣れでコースアウトしたり、安全確認が不足して減点されたりと、課題が山積みだった。
「何度も落ちてしまうと、やっぱり私には無理なのかも……」と心が折れそうになったこともあった。
けれども、練習を重ねるうちに少しずつ成長を実感できるようになった。
「前回よりも安全確認がスムーズにできた」「試験官に褒められた」と小さな手応えを積み重ねながら、合格への道を進んでいった。
そして本免許技能試験では、3回目でようやく合格。
「最後の確認がきちんとできましたね」と試験官に言われたとき、胸の中で大きなガッツポーズをした。
6か月かけて得た免許と自信
挑戦を始めてから、気づけば半年が過ぎていた。
友人の中には教習所に通ってあっという間に免許を取った人もいたが、真理子さんにとって“一発試験合格”という道のりは、何にも代えがたい経験だった。
「時間はかかったけれど、その分、自分で掴み取ったという達成感があります。家族も“ここまで頑張ったなら安心だね”と喜んでくれました」
免許を取得できたことはもちろん嬉しいが、それ以上に「努力を続ければ必ず結果が出る」という自信を得られたことが大きな収穫だったという。
教習所より安く、濃い経験を積めた
半年間の挑戦にかかった費用は、公認教習所に通うよりもだいぶ安く済んだ。
スポット練習を選んだことで、必要な部分だけに集中できたのも効率的だった。
もちろん、失敗や不合格の連続で精神的にきつい場面もあったが、それを乗り越えたからこそ、免許を手にした喜びはひとしお。
何より「自分で選んだ方法で、自分の力でやり切った」という誇りがあった。
これから挑戦する人へエール
「一発試験は決して楽な道ではありません。でも、合格できたときの喜びは何倍にもなって返ってきます」
真理子さんは、自分と同じように挑戦を考えている人に向けて、こんなアドバイスを残した。
「落ちても、それは成長の証。毎回新しいことを学べば、必ずゴールに近づきます。学科は独学でも十分対応できますし、技能は練習を工夫すれば突破できます。大事なのは“諦めない”という気持ちです」
半年かかった道のりを振り返り、彼女は笑顔でこう締めくくった。
「挑戦して、本当によかったと思っています」